はじめに
面接で必ず訊かれる質問の一つに
あなたの強みを教えて下さい。
というものがあります。
この「強み」について、みなさんは明確に答えられるでしょうか?
強みを答えられない人は、少なくない
以前、Twitterで、「他の法務の人に負けない法務関連のスキル」を持っているかについてアンケートを取った結果は、以下のとおりでした。
【法務担当者向けアンケート】
面接で他の法務の人に負けない法務関連のスキルを持っていますかと聞かれたら…(嘘はつかない前提)— Genichi Kataoka (@katax) June 23, 2020
閲覧用を選択した方を除くと、実に半数弱の方が「持っていない」と回答しているのです。
この結果は、質問を「他の法務の人に負けない」という強めの表現にしていたとはいえ、驚きでした。
強みというのは、言い換えれば「あなたを採用する理由」でもあります。もし面接の場で訊かれたにも関わらず、(嘘をつかない限り)自分の強みを答えられないのであれば、それは、「他の人ではなく、自分を採用する理由は特にありません。」と言っているのに等しいわけで、かなりまずい状態です。
強みを勝手に発見してもらえることもあるが…
とはいえ、自分で自分の強みを答えられないからといって、面接で必ず落とされるわけではありません。なぜなら、学歴や職歴、年齢、資格などのスペック面が強みのケースでは、自分の口で語らなくても、採用企業側がそれを強みとして勝手に認識してくれるからです。
ただ、スペック面での強みを武器として転職できるのは、ポテンシャル採用のケースか、そうでなければ「誰でも良いからとにかく来てほしい」のような切羽詰まった求人に限られます。
また、勝手に発見された強みが誤解だった場合には目も当てられません。●●で法務を5年もやっていたのだから、××は当然対応できるはず、といった採用企業側の思い込みで割りを食うのは、候補者にとっても同じなのですから。
その意味では、採用企業に強みを発見してもらえば良いというスタンスは決しておすすめできるものではありません。
強みは「ある」というだけでは不十分
なお、面接の場では、自分の強みを特定し、伝えられるだけでは十分とは言えません。面接官に、「自分が確かにその強みを持っている」ことを納得させる必要があるのです。
そして、面接官を納得させるために効果的なのは、「それを自分の強みだと自覚した経緯や理由」をできるだけ具体的に話すこと、です。
例えば、他者からの評価は、納得を得るための材料としてわかりやすいものの一つです。
ただ、この点も、単に「●●の点が優れていると評価されていた」で止めてしまっては物足りません。「●●の点が優れていると評価されていたため、●●に関するPJには必ず自分がアサインされていた。」といった具合に、できる限り具体的に伝えることが重要です。また、その影響範囲も、社内にとどまらず、社外(定評ある研究会など)にまで波及しているものであれば、さらに説得力は高まります。
また、書籍や雑誌記事、場合によってはウェブメディアでの執筆実績も、強みを証明するツールとしては有用です。その意味では、執筆依頼はできる限り断らず、また顕名で対応することをおすすめします。
強みが全くない人は、実はそんなにいない
ここまでお読み頂き、さしたる強みがない自分にとって無関係だな、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、日々漫然と過ごし、スキルを蓄積してこなかったような(やった端から忘れていくような)方でなければ、何の強みを持っていないという方は、実はそれほど多くはないはずです。
ではなぜ上記のようなアンケート結果になったかというと、これは私の想像ですが、ご自身の強みを意識していないだけか、またはあえて意識しないようにしているからなのではないかと思うのです。
強みを意識すると、その反射として「自分が強みとする領域で、自分より優れた人」の存在が目に入りやすくなり、劣等感を覚える機会は多くなりますし、また、自分の強みを外に向けて公表してしまうと、「実際どの程度強いのか」という他者からの評価にさらされることにもなり、「大したこともないのに」といった否定の言葉を投げかけられてしまうことにも繋がりかねないからです。
しかし、こういった負荷を避けるために自分の強みから目をそらしてしまうのは、あまりにもったいないことです。
なぜなら、強みを意識し、劣等感や他者からの評価にさらされることによってこそ、その強みが磨かれていくからです。
転職を考えている方も、そうでない方も、目標設定の時期など、定期的に「自分の強みは何で、それはどのくらい強い強みなのだろう」という振り返りをしてみては、いかがでしょうか。