法務から他分野にチャレンジする際に押さえておきたい3つのポイント

法務のキャリア

はじめに

かつては、ジョブローテーションに法務が組み込まれているような大企業を除くと、法務は他職種への異動が少ない部署の一つでした。

しかし、司法試験の合格者の増員に伴って法務を貫くキャリアでサクセスイメージを持ちづらくなってきているという消極的な意味でも、また、法務としてではなく、より事業に近いところで業務に携わりたいという積極的な意味でも、法務を飛び出て他職種にチャレンジする機運は徐々に高まっています。

そこで、私自身のバックオフィス全般を管掌領域に広げるチャレンジをした際の経験や、法務からビジネスサイドにチャレンジをした経験のある方からお伺いしたお話を元にとりまとめた、他の分野にチャレンジする際に押さえておくべきポイントをご紹介します。

3つのポイント

ポイント1:相談できる人を確保する

特に法務で「やれていた」人にありがちなのが、他職種でも多少苦労はすれども、法務と同じようにやれると思ってしまうことです。しかし、法務としては非常に優秀であった方を含む多くの方は、「法務以外の分野への挑戦は想像していた以上に難しいものだった。」と口を揃えておっしゃいます。

つまり、他職種への挑戦に際しては、最初に激しくつまづくことを覚悟する必要があるのです。

そして、専門性のない分野でのつまづきから、自分だけの力で回復することはなかなか簡単ではありません。このようなケースで必要になるのは、その分野における考え方、振る舞い方、業務フロー、落とし穴などに知見を持つ専門家のアドバイスです。
そのため、他の分野にチャレンジする際は、その分野を専門とする人に相談できる状態を作っておくことが重要になります。

なお、相談相手は、極力業務フローから外れた方で、できれば社外の方が望ましいです。なぜなら、相談時には自分の弱みをありのままさらけ出す必要があり、社内の人にはどうしても「ここまでは言えない」というブレーキをかけてしまいがちだからです。
具体的には前職の上司や同僚、勉強会などの社外活動で知り合った方がおすすめです。

ポイント2:セーフティネットを意識する

前述のように、法務を飛び出して他の分野に挑戦することは難しいチャレンジになるため、どれだけ努力してもその挑戦は失敗に終わってしまう可能性は一定程度残ります(だからこそ「チャレンジ」なのです)。

そのため、もしうまく行かなかった場合に撤退する方法や場所を事前に見定めておかないと、撤退すべき状況に至ってもスムーズに撤退することができず、体調を崩してしまうことにも繋がりかねません。

なお、セーフティネットといっても難しく考える必要はありません。例えば、弁護士であれば、法曹資格そのものがセーフティネットになりますし、前職の出戻りの寛容さ次第では、円満退職することで「出戻ることができる」という状態も強力なセーフティネットになりえます。
また、転職をせずに現職で他の分野に挑戦するという方法や、法務+他職種という形で挑戦することも、法務に戻るという選択肢を取りやすいためセーフティネットとして機能します。

余裕があるときは当然に頭に浮かぶこれらのことも、精神的に追い込まれてしまうと思いつかなくなってしまうものなので、チャレンジする前に「もし失敗したら、ここに撤退する」という選択肢をいくつか持っておくようにしましょう。

背水の陣を敷かないと必死になれない、すぐに逃げてしまう傾向がある方も、選択肢自体を潰してしまうのではなく、周囲に不退転の決意を宣言するなどの方法で、セーフティネットを残しつつ自分を追い込むのがおすすめです。

ポイント3:自分に対する期待値を上げない

これは解説不要なほど当たり前のことなのですが、もともと難しい他職種へのチャレンジに、周囲からの過大な期待が加わってしまうと非常に苦しい状況からスタートすることになってしまいます。

そのため、不本意かもしれませんが、面接等で「法務以外は素人です」という事実をしっかり伝え、期待値を過剰に上げてしまうことのないようにしておくことは重要です。ストレス耐性が高く、かつ基礎能力が高い方であれば、まず「やれる」と宣言してから不断の努力でキャッチアップするというのも一つの方法ではありますが、個人的には一般化するには危険すぎるやり方と思っています。

なお、自分としては意図していなくても、ベンチャー企業に入る一人目のバックオフィス担当であったり、役員からの強力な推薦で引き抜かれたといった経緯があったりすると、自分の知らないうちに上司や同僚からの期待が高くなってしまっていることにも注意しましょう。また、大企業や商社・金融からの転職で給与を維持するために会社ががんばって給与を捻出したようなケースも、給与を検討した方からは「これだけ出しているんだから」という目で仕事内容を見られてしまうものなので、期待値コントロールという観点からは、会社の給与水準も気にしたほうが良いポイントの一つです。

さいごに

このエントリーでは難しさだけを強調してしまいましたが、他の分野にチャレンジすることは、うまく行けばハイブリッドな人材として大きく進化することにつながりますし、また、仮に失敗に終わってしまっても視野を大きく広げることができるため、決して無駄にはならないと思います。

もしチャンスが訪れた際には、ぜひ一歩を踏み出してみることをおすすめします

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