どんな人?
- お名前:山本さん
- Twitter ID:@maki_nov16
- 転職回数:3回(グループ内異動→Wantedlyスカウト→Greenスカウト)
- 30代女性
〜1社目
本日はよろしくおねがいします。
早速ですが、山本さんは大学をご卒業後、そのまま新卒で就職されているんですよね。
実は、大学卒業後に新卒で就職された方は、これまでのインタビューには登場していなかったんです。偶然なのか、twitterにいる法務の方が異端児揃いなのかはわかりませんが(笑)
え、そうなんですね。
私はそもそも大学での選考も政治学であり、最初の配属も法務ではなかったので、その意味でも他の法務の方とは少し毛色が異なるかもしれません。
新卒の就職活動の際は社会のインフラを担う業種の会社、中でも陸運や海運などを中心に応募していましたが、正直な所、職種として法務は視野に入っていませんでした。
職種よりも、業種の方がキーポイントでしたね。
結果として陸運の会社に就職されたので、希望通りでしたね。配属も希望が通ったのでしょうか?
配属希望はコーポレート部門で出しており、経営企画に配属されたので、希望通りではありました。
ただ想像していたのと違っていたのはその内情で、グループの再編が行われ、持株会社化された直後の入社だったので、そもそも私が入社したホールディングカンパニーの組織はまったく整っていないような状況だったんです。
人員構成としても、運輸業を営むメインの事業会社に働き盛りのマネージャーがガッツリ残ってしまっており、ホールディングスは役員と若手の2層にくっきり分かれていて、そんな中に新卒で私ともうひとりの同期が入ったので、かなり大変でしたね。
そもそも、話を聞いてみると、新卒がコーポレート部門に配属された事自体が10年ぶりのことだったらしく、新卒へのOJTのノウハウも乏しかったので、見様見真似で仕事を覚えた1年間でした。
経営企画を1年間務められたあと、法務に異動されたんですよね。法務への異動は、どういった背景によるものだったんですか?
正直、当時はよく理由はわかっていませんでした。学生時代に法律を専門的に学んでいたわけではありませんし、法務への異動希望を出していたわけではなかったので。
ただ、経営企画は、各事業会社と財務部門の双方に顔が利くようになる業務なので、事業サイドと財務サイドのキーマンが誰かを把握できていたんです。
法務部門には全社の状況を理解している人がほしいというニーズがあったようで、この点が買われたのかもしれません。
あとは、事業会社の法務とホールディングスの法務との性格の違いも影響したのかもしれません。当社の場合、事業会社の法務は現場で発生する事故などのトラブルへの対応や、従業員対応などの「切った張った」が必要な業務の比重が大きかったので、もし事業会社の法務が異動先だったら、私は対象にならなかったかもしれません。
法務ではどのような業務を担当されていましたか?
法務といえばまずは契約書、というイメージはあると思いますが、私自身、全くの未経験でしたので、最初の2年は社内苦情窓口の取りまとめやCSR報告書の担当などをしており、契約書には全く触っていませんでした。
転機になったのは2年目の終わりに、会社が海外進出することになったことでした。
海外で事業展開する上で避けて通れないのは英文契約書の処理ですが、社内に英文契約書に対応できる人はほとんどいなかったことから、「山本、英語できるだろう」という感じで海外進出プロジェクトにアサインされました。
確かに社内では英語ができる方だったと思いますが、英文契約書は英語ができれば対応できるというものではありませんので、本当に苦労しました。
解説書を読んでもすぐに理解できるわけではありませんし、そもそも契約書の分量も多いですし。
ただ、そんな中でも幸運だったのは、海外事業プロジェクトにアサインされた他の部署の実務メンバーも、私の同期や、前後1年くらいのメンバーがほとんどだったことですね。みんなで同じように悩み、検討し、励まし合いながら徐々に力を付けていきました。
とはいえ、すごく苦しかったのもまた事実で、正直、朝起きて会社に行きたくないな、と考えてしまう時期もありました。
それまでの比較的ゆったりとした業務内容と比べると、一気にギアチェンジした印象ですね。会社としても意図的にそうしていたのでしょうか。
そうだと思います。
まずは守りの仕事から始めさせて、慣れたら攻めの仕事、というレールを引いてくれていたようでした。そもそも新卒生え抜きが全社で1%くらいしかいない会社だったので、新卒は大切に育ててくれていました。
ただ、そうは言ってもなかなかつらい毎日で、ある日フラッと会社の近くにある心療内科のクリニックに立ち寄ったら、お医者様が私の置かれている状況をすごく丁寧に説明してくれたんですね。眠れない、会社に行きたくない、食欲がわかない、というところから更に進むと、次は外に出れなくなる。外に出れなくなると、処方が変わる、と。
その時はまだ元気はあったので、そういわれて逆に意地になって、土日に結婚式場でアルバイトしたり、人と交流する時間を作ったりしてましたが、今振り返ると、土日の使い方がなってなかったですね(笑)
忙しすぎて、麻痺してしまっていたのかもしれません。
〜2社目
病むほど忙しかったのに、土日は逆に予定を入れるようにしていたというのはすごいですね。パワーでねじ伏せた、という感じでしょうか。
そんな中での転籍とのことですが、どのような経緯があったのでしょうか。
当社では「そろそろ旅にだそうか」という感じで、グループ会社へメンバーを異動させる制度があるのですが、その一環でした。
具体的には、異動対象者をリストに載せ、そこからグループ会社側が採っていく、という感じですね。グループ会社で人事責任者をしていた方がホールディングス時代の先輩だった縁で拾っていただいたそうです。
異動先は事業会社による決済等を取り扱っており、海外事業のような忙しさとは無縁の平和で安定した会社でした。同社ではいわゆる社内ITや情シスと呼ばれるような役割を担当することになり、このとき初めて部下を持ちました。
ということは、一旦法務を離れることになったんですね?
はい、そうです。
強いて言えばPマーク関連業務があったくらいで、あとは法務っぽい業務は担当していませんでした。
職種は大きく変わりましたが、年収はスライドで、役職についたこともあり、役職手当もいただけるようになりましたので、そういった意味でのグループ内異動の良さはありましたね。
一般的な転職であれば、未経験の職種への転換は難しいと思いますし、メンバーのマネージメントを任せてもらうとなると、さらに時間がかかったはずですので。
また、海外事業プロジェクトにどっぷり使っていた頃と比べると、一瞬ではありますが、忙しさが圧倒的に軽減されました。
ただその反面、これまでとの比較であまりにも暇になりすぎたので、Wantedlyに登録して消極的な転職活動を開始したのもこの時期でした。
消極的な、ということは、この時点ではあまり転職意欲は高くなかった、ということでしょうか。
暇でしたし、将来の展望という意味でも転職自体はいずれしたいと思っていましたが、同時に「今じゃない」という思いも強かったですね。これまでの私の経験・経歴を客観的に振り返ると、希望する年収・ポジション・職種での転職は難しいだろうな、と。
なので、自分からエントリーすることはなく、スカウトを頂いたらお話を聞きにいく、という感じでした。
「全く違うでしょ」という案件以外は、スカウトを頂いたら基本的にはお話を伺いに行っていました。
経営企画、法務、情シスという職歴をたどってきた山本さんに届く案件としては、どのようなものがあったのでしょうか。
ベンチャーや中小企業からのスカウトが多かったですね。
内容は、「コーポレートの担当者がほしいが、何人も揃えるわけには行かないところ、経歴的になんでもできそうなので、色々任せたい」といったトーンでした。だいたい、2ヶ月に1回位のペースだったと思います。
ただ、多くの会社は、私が入社しても役に立つイメージを持てなかったので、転職には至りませんでした。
具体的には、あまりに小規模で管理部門というフェーズではそもそもない会社や、とりあえず大企業でバックオフィスを幅広くやっている人を採用したら、いい感じにやってくれるだろう、みたいな、ざっくりとしたイメージしか抱けていない会社などですね。
どんな人を採用する必要があって、その人に入社後どんな業務をやってもらうべきか、を採用側が明確に理解していない会社に入っても、価値を発揮することは難しいですから。
もちろん、若者がウェイウェイしている社風で、シンプルに「これは私には合わないだろうな」と思った会社もありましたよ(笑)
〜3社目
そんな中、次の転職先として「ここ」と決めたのは、何が決め手になったのでしょうか。
まず、事業と業界の説明を、良い点だけでなく、悪い点も含めてきちんとしてくれたことが大きかったです。
その上で、将来的にこうなっていなければならないという、ビジョンも明確でした。
また、単に誰かを採用すればいい感じにバックオフィスを整えてくれるだろう、といったざっくりしたイメージではなく、管理部門を構築する具体的なニーズがあった上での採用であることも大きかったです。
次は保険業だったとのことですが、業界が大きく変わることの戸惑いはありませんでしたか?
もちろん、最初は考え方の違いや社風の違いなどは小さくありませんでしたが、正直、グループ内異動のときも同じだったので、戸惑うという感じではありませんでした。グループ内異動の経験で、誰が何をやっているのかがわかれば、バックオフィスの仕事は回せるということを実感していましたから。
その意味では、知っている人がいる環境で職種・業種の転換を経験できたということも、グループ内異動の良い点と言えると思います。
今回の転職は大企業からベンチャーへの転職なので、給与面での妥協は必要だったのではないでしょうか。
えぇ、そうなんです。
このときの転職では、年収で50万円以上下げることになりました。
下げたとしても、別に生活に困らない水準ではあるので、別に大したことではないとその時は考えていたのですが、実際は結構気持ちの面できついものがありました。
まず、昇給しても全然嬉しくないんですよね。だって、転職前の給与を知っている以上、「上がった」というより、「元の給与に近づいた」というのが正直な感想になっちゃいますから。
昇給させた方としては、現職給与をベースに考えるわけなので、その点の認識のギャップは小さくないわけです。
また、昇給すると言っても、ベンチャーの管理部門にそれほどお金をかけるわけには行きませんから、実際のところ、年俸ベースで50万円落とすと、そこまで戻すのはものすごく大変で、時間がかかるということも改めて実感しました。
一生懸命会社に貢献した結果、給与的には前職より低いのか、と思うと、どうしても気持ちが萎えてしまうのは避けられませんでした。
ということは、現職への転職は、給与面での不満が原因だったのでしょうか?
あ、いえ。決してそういうわけではありません。
どちらかというと、自分はここで身を引いた方がよいのでは、という気持ちのほうが大きかったです。もちろん、給与の低さがそういう気持ちに至った要因の一つであったかもしれませんが、それよりも、自分自身のやりきった気持ちと、それが会社にとってのベターな選択だろう、という想いの方が大きかったです。
当初私のミッションだった「管理部門を構築する」ということは、2.5年の在籍期間で概ね達成できている状況でしたし、その管理部門も私が率いるのではなく、会社のことも業界のことも熟知している他のメンバーに渡した方がうまくいくだろう、という感触もありました。
加えて、会社の規模が大きくなり、雑多な業務が無限に降ってくるようになり、その中の大きなイベントであった創業式典をやりきったタイミングで、燃え尽き感があったんです。
もうこの会社で私がやらなければならないことはやりきったし、もういいかな、と。入社以来、無我夢中で走り続けて疲れてしまった、という面もありました。
〜4社目
なるほど。そして、現職への転職につながったんですね。
現職への転職は、どのようなチャネルを利用されたんですか?
まずは、リファラルからでした。
新卒で入った一社目のときの先輩や同期の中にも転職している人がいたので、その方に会ってフィードバックを受けたり、実際に選考に進んだりもしました。
ただ、残念ながらこのときは採用にまでは繋がりませんでした。
また、前回利用したwantedlyに登録し直すとともに、今回は新たにGreenにも登録しました。
Greenは、エンジニア向け媒体というイメージがありますが、バックオフィスでも求人があるんですね。
基本的にはGreenはエンジニア向けだと思います。
ただ、今回の転職に際してどういう会社に行きたいか、自分の価値を最も発揮できる会社はどんな会社かを考えた結果、「上場企業」「IT」という軸を立てたので、その軸であればGreenはありだと思ったんです。
実際、掲載されているバックオフィスの求人は5件くらいしか当時はありませんでしたが、逆に言えばGreen上には同職種のライバルも多くないはずなので、やってみる価値はあるな、と。
読みが当たったのか、登録後Green経由でもおもしろそうなスカウトをいくつか頂いたのですが、中でも現職のオファーは目を引きました。とにかく切実だったんです。スカウトというより、救援要請という雰囲気でした(笑)
実際の面談でも、管理部門の体制が十分とは言えない状態で子会社の連結が始まろうとしており、様々な困りごとが日々発生しているという状況を伺ったのですが、ここであれば私は役に立てそうという具体的なイメージを持てました。
後で聞いたら、ドン引きされる覚悟で話したところ、「大変ですねぇ」みたいな感じで淡々と受け止めたのが頼もしく映ったそうです。確かにとても大変そうな状況ではありましたが、これまでの自分の経験に照らすと何をどうすればよいかをある程度想像できたのが良かったのだと思います。
ある意味、今目の前で具体的な困りごとが発生している会社の方が、必要な人材の要件を明確に研ぎ澄ませる分、ミスマッチは少ないと思っています。逆に、これから大変になると思うので、今から手当しておこう、という求人は、要件が拡散してしまって、本当にフィットする人を採用するのが難しいのかもしれません。
給与面ではいかがでしたか?
前職在職中の昇給では、結局新卒のグループを出たときの年収を超えなかったので、新卒のグループを出たときの年収を希望年収として提示したところ、会社が想定していたよりずっと安い金額だったようで、それより上乗せした給与提示をしていただけました。
Green経由の採用はエージェント経由の採用よりもコストを抑えられるので、その分給与を手厚くできたという背景もあったようです。
そして、今の担当職務は、法務なんですよね?
はい、そうです。
入社直後は情シスも担当していましたが、1年も経たないうちに専任者を採用できたので、情シスは手放し、今は法務専業です。
所属は管理部という大きな括りの中に配置されており、ポジションは「おいおい考えていきましょう」というふんわりとした位置づけでやっています。
これから転職する方へのメッセージ
最後に、これから転職をしようと考えている法務の方に、一言お願いします。
面接だけでその会社と合うか否かを見極めるのは難しいので、転職するに際しては、ぜひ在籍しているメンバーと話をする機会をもらったほうが良いと思います。また、法務は法務だけで業務が完結することがないので、その際は法務だけでなく、財務や総務といった隣接部門や、営業などの依頼部門とも話してみるのがおすすめです。
今、法務がどういう状況なのか、どういう観点で採用をしているのかを、レポートラインとは違う角度で把握することで、ミスマッチを防ぐ確率はぐっと上がると思います。
一次面接でこのようなリクエストをするとめんどくさいと思われてしまうかもしれませんが、二次や最終まで進んだ段階であれば、募集企業側も採りに来ているので、融通を利かせてくれることが多いと思います。
なるほど。実践的なアドバイスですね。
本日はありがとうございました!