どんな人?
- 40代男性
- 転職回数6回(エージェント・転職サイト・ビズリーチ)
- Twitter ID:@guslegal
〜1社目
今日はよろしくおねがいします。
野副さんは6回の転職をご経験されていらっしゃっており、テンポよくお話をお伺いしないと時間切れになってしまいそうなので、早速1社目についてお伺いさせてください。
はい、よろしくおねがいします。
早速1社目からお話を・・・と思いつつ、私のバックグラウンドがこの後に影響してくるため、就職前の状況から始めさせてください。
まず、私はいわゆる帰国子女で、高校も外国語教育に強いところへ進学したので、同世代の方と比べると英語力は高い方だったんです。そんな中、語学を売りにするならもう一つ別の言語を身に着けたいなと思い、これから伸びそうな国として、ロシアの大学へ進学しました。
ですが、今思うとロシアの大学を選んだのはちょっと失敗でした。
ちょ、ちょっとまってください。
入りの方向が予想を外れすぎていて追いつけてないです。
えっと、日本の高校からダイレクトにロシアの大学へ進学されたんですよね。
失敗だったというのは、文化の違いとか、ロシア語の問題とか、でしょうか。
あ、いえ、そういうことではなく。
ご存知かと思うのですが、ロシアの女性って、めちゃ美人なんですよ。
それで、大学にろくに行かずないで、クラブに入り浸っちゃったんですね。
結局4年間在籍した状態で振り返ってみると、これは到底卒業できないな、という単位の取得状況で。
大学の卒業見込みもないのにこのままロシアに居続けるわけにも行かないな、ということで、帰国することにしたんです。
いやぁ、ロシアの女の子、ほんとかわいかったなぁ・・・
そのタイミングでの帰国だと、就職氷河期真っ只中、ですよね。
最終学歴がロシアの大学の中退だと、なかなか就職は厳しそうですね。
そうなんです。
なので、就職活動はせず、その代わりに何か食える資格を取ろうと思ったんです。
で、食える資格といえば弁護士か公認会計士だな、と思い、数字が得意なわけじゃないからという消去法で司法試験の勉強をはじめました。
それまで法律の勉強をしたことはなかったので、ゼロからのスタートだったのですが、そんなに悲壮感があったわけではなかったです。
そして、このときものすごく没頭したのがパチスロです。
いや、勉強に没頭しましょうよ。そこは・・・。
なにやってるんですか。
当時はもうこの道で生きていこうかな、と思っていたくらい真剣に打ち込みました。
ですが、数年そんな生活をしていた頃にパチンコ・パチスロ業界に規制が入り、同時期にロースクール制度も始まることになったので、良いタイミングかなと思って司法試験から撤退して、就職することにしました。
ただ、司法試験受験生って名乗れば誰でもなれちゃうものなので、法律を学んだことを客観的に示すために、就職に際して行政書士だけはとっておきました。
破天荒すぎませんか・・・。
気を取り直して、最初の就職にはどのチャネルを使われましたか?
実はこのとき、転職サイトや転職エージェントという存在を知らなかったので、職安メインで職探しをしていました。
とはいえ職安には「法務」という求人はないので、総務とか管理部門とかの募集で契約書のチェックなどの法務的な仕事もあるよ、という案件に応募する感じです。
書面でもかなり落とされて苦労したのですが、なんとか従業員100名くらいのガラケーのコンテンツ企業に総務兼法務として無事就職することができました。
ただ、職安に掲載されている仕事って、条件的にはかなり厳しくて、特に給与は、試用期間は月額18万円、3ヶ月後に試用期間満了後に21万円という条件でした。
正直、これでは生活もままならないという金額で、貯金を切り崩しながら働いている感じだったのですが、それでも法務の実務経験を積めることはありがたかったので、「1年間頑張って、次の給与改定で25万を超えなかったら転職しよう」と決めてがんばることにしました。
そして、1年後、基準にしていた月額25万を超えることはできなかったので、予定通り転職することにしました。
法務の仕事をさせてもらえたのはありがたかったのですが、さすがに貯金を目減りさせながら働くのでは割に合わないですからね(笑)
〜2社目
最初に職歴をつけることを重視して条件面は大きく妥協しつつ、同時に在籍を続けるミニマムラインを設定するというのは、戦略的で素晴らしいと思います。
職歴がついた次の転職は、いかがでしたか?
まず、前職の業務で転職サイトのdodaを使っていたのですが、こんな便利なものがあったのかとびっくりしまして。この会社に入るときは世間知らずだったので、仕事を探す場所としては職安しか思い浮かばなかったのですが、次に転職するときは自分でもこれを使おう、と思っていました。
転職する方向性を決めた後早速dodaに登録すると、複数のエージェントから連絡が来て、スルスルと2〜3社から内定をいただくことができました。
英語ができるというのがポイントだったようです。今でこそ英語力は法務の必須スキルの一つみたいな位置づけですが、当時は英語にアレルギーを持っている方も少なくなかったので、当時はそれなりに強い差別化要因になっていました。
内定を頂いた会社から、国内のコンテンツを海外にライセンスする会社に行くことにしました。従業員規模は前職と同じくらいで一人法務なのも同じですが、今度は法務専業です。また、親会社もあって、そちらには法務部があったので、相談したり支援を受けられる状況にはあって、業務環境はかなり整いました。
まさに差別化要因の語学力を活かせる会社を選択されたんですね。
転職を通じて、ネックだった給与は改善できましたか?
そうですね。面接で現職の給与を伝えると、各社口を揃えて「給与低いね」というリアクションだったので、相場的にも自分の給与は低かったんだなぁということを再確認しました。
こういうことって同じ会社の中にいるとなかなか気づけないものなので、そういう意味でも外に出るのは重要だと感じましたね。
実際、転職に際して、年俸ベースで100万円以上給与が上がりました。前職どれだけ給与低かったんだ、という。
この会社では、共同事業契約やライセンス契約などの英文契約書をたくさんチェックしてましたね。月に2本くらいはコンスタントに締結していたくらいのペースだったと記憶しています。
充実感もありましたし、転職後にあった給与改定でもさらにもう一段大きく昇給していただいたので不満らしい不満はなかったのですが、外部環境が急速に厳しくなり、親会社の業績が傾いてしまい。
リーマンショック、ですか。
はい、そうです。
この煽りで勤務先が他社に買収されることになりまして。
一人法務だったので、買収される側としてDD対応もがっつりやることになりました。状況が状況なので、DDを通じて管理部門をすべてリストラするといった方針が否応なしに耳に入ってきて、辛いDD対応でした。
ただ、同時に、このときのDD対応を通じて、弁護士や公認会計士などのプロが、会社を買う時どのような点に注目するのかを肌身をもって知れたのは、この後とても役に立ちました。
無事売却が終わり、残念ながら予定通り管理部門は全員リストラ対象になったのですが、会社都合だったので、会社が紹介料を負担するという条件で会社指定のエージェントを使うという、一風変わった転職活動になりました。
「紹介料は転職元企業負担」という条件はエージェントにとってとてもやりやすい条件だったようで、かなり積極的に動いていただけた記憶があります。
とはいえ、リーマンショック後の転職市場はかなり状況が厳しく、退職してから3ヶ月間くらい無職になってしまいました。
法務に限らず、求人全般が大きく落ち込みましたもんね。
この先どうなるのだろうか、みたいな不安も大きかったのではないですか?
うーん。そこまで不安は感じていなかったと思います。
何しろ、この期間は退職金で旅行に行きまくってましたからね。
エージェントから「明日面接入れられますか?」って電話がかかってきた時、沖縄にいたので「明日はちょっと無理ですね。」なんて言ったりして。
無職なのに「明日はちょっと無理」って、エージェントさんとしては「なぜ?」って感じだったのではないでしょうか(笑)
〜3社目
とはいえ、3ヶ月で転職先が決まったんですよね。
3社目はどんな会社だったのでしょうか。
3社目もコンテンツを取り扱う会社だったのですが、1社目、2社目とは毛色がちょっと違っていて、大きなコンテンツ流通グループの中で、新規事業や、いわゆる18禁コンテンツを取り扱う会社でした。
ここでは一人法務ではなく、親会社から出向してきたマネージャーと同僚二人と自分を合わせて4名の体制で業務にあたりました。このマネージャーは親会社へ帰任することが決まっていて、マネージャーの後任を採用するという位置づけでの入社でした。
状況が状況だったので給与的には年俸で50万円くらい下げての転職になりましたが、その後無事マネージャーに昇格できたタイミングで100万円ほど昇給したので、給与的なマイナスは一時的なものですみました。
法務のキャリアステップで一番難しいのが法務部長への昇格だと思っていて、一時的に給与を下げることになったとしても、長い目で見ると一度法務部長という肩書をつけることの意味は大きいと思います。
しかも、その後の昇格とともに、一度下がった分以上の昇給を獲得されているのはさすがですね。
仕事は楽しかったし、海外との契約も多く英語力も活かせるという意味でも良い職場だったんです。大きなグループの中間持株会社だったので、組織再編の業務もありましたし、業務の幅も広がりました。
他方、取り扱いコンテンツ的に世間体があまり良くないこともあり、一生勤め続けるというイメージを持つことはできず、転職市場に求人が戻ってきたタイミングで転職サイトにレジュメを載せて、来たスカウトを検討するという消極的な転職活動を開始しました。
〜4社目
転職活動を始めてからどのくらいで次が決まりましたか?
大体3ヶ月位だったと思います。
いくつかスカウトをいただいてはいたのですが、どれもピンとこなくてスルーしていたんです。
そんな中、パチンコ・パチスロメーカーからスカウトを頂き、司法試験受験生時代の思い出が蘇ってきて面接に行ってみたんです。
そしたら、スカウトを送ってくれた方も、その後に面接してくださった法務の方もみんなパチスロ好きで、ディープな話題でものすごく盛り上がったんですね。
で、法務にもこんなにパチンコやパチスロ好きな方がいるんだな、とすごく興味が湧いて、この会社で働きたいって思ったんです。
ここで伏線回収するんですか・・・。
人生何が影響するかわからないものですね、ほんと。
転職先でもマネージャーをされていたのでしょうか。
課長だったのでマネージャーに入るのかわからないのですが、管理職ではありました。自分以外に法務課のメンバーは3人、そのうち1人は派遣社員という体制でした。
メンバーのマネージメントを中心に、M&A関連の契約などは自分で手を動かすといった感じです。
自分の好きなものを取り扱っている会社ですし、職場の環境も良かったので、今までで一番長く在籍しましたね。といっても、4年弱ですが。
給与的にも転職時に50万円ほど上がり、その後も給与テーブルに沿って順調に昇給していきました。派手さはありませんが、着実に、という感じです。
〜5社目
そんな天職ともいえそうな会社を離れることにされたのはなぜだったのでしょうか。
2社目の上司だった方に声をかけられたんです。
それも、「自分がCFOをしている上場準備会社で常勤監査役をやらないか」って。
キャリアを考える上で、上場会社の役員になれる可能性があるという点は魅力でしたし、なにより元上司から頼られている、必要とされているということが嬉しくて、チャレンジしてみようと思って飛び込んだという感じです。
この会社が上場に向けて強化する必要があったポイントはコンプライアンスだったので、法務のバックグラウンドを持つ私に声がかかったとのことでした。
上場準備中ということもあり、報酬についてはSO含みで額面を落としての転職でした。結局主幹事証券が常勤監査役にSOを出すべきでないと反対したため、SOは発行されなかったのですが。
リファラルの嬉しさと難しさ、とてもわかります。
ただ、誘っていただいた方がCFOなのであれば、業務執行と監査の両面でコンプラ強化をしていけそうではありますよね。
ところが、CFOも色々あって非常勤取締役に退くことになってしまったんです。
そうなると、監査役としての自分だけでこの会社を変えることは難しく。元上司から謝られちゃいましたが、別に彼が悪いわけではないですからね(笑)
過去大きく成功したプロダクトがあったのでキャッシュは潤沢だったのですが、事業がなかなか育っていかない中で、このままずっと上場準備中のままの会社で監査役をやり続けるわけにもいかないので、早めに方向転換をすることにしました。
結局、この会社に在籍していた期間は1年間でした。短い期間でしたが、これまでの法務業務中心のキャリアに加え、監査役は経理・会計面での知識も必要になるので、視野を広げられた1年間でもありました。
〜6社目
上場準備中に監査役の報酬が上がることもないでしょうし、業務執行側の協力者がいないとなると抜本的な改革も難しいですから、上場が見えているのでなければ早めの撤退は正解だったのではないかと私も思います。
次の転職はどのようなチャネルを使われたのでしょうか。
ビズリーチですね。ビズリーチって無料会員でもレジュメを登録していると、ちょくちょくエージェントからスカウトの連絡が来るのですが、その中で良いなと思ったエージェントさんに動いてもらいました。
JACのエージェントさんだったのですが、エージェントを選ぶ際は、会社ではなく、エージェント個人を見て選んだほうが良いと思います。
この点、ビズリーチはエージェント毎に評価ポイントが付くので、判断しやすかったですね。ポイントが全てではないとはいえ、やり取りするのは一定ポイント以上のエージェントさんに限定するといった足切り的な位置づけでポイントを見ることで、ある程度効率化することができたと思います。
なるほど。
最初は職安から始まった転職活動が徐々に洗練されていくのがすごいですね(笑)
そのエージェントさん経由で入った次の会社はどんな会社だったのでしょうか。
投資やオフショア開発などを取り扱う上場企業でした。
とはいえ、本社の従業員は100人程度だったので、東南アジアに大きな開発拠点を抱えているといった構成です。
業務的には法務以外にも総務・人事も所管するグループのグループ長という位置づけでしたが、総務と人事は私以外にメンバーがいたので、私は法務をメインでやっていました。
このときも転職に際して年俸で100万円くらい上がったと思います。
この会社には1年間在籍したのですが、一言でいうと「激務」でした。中でもM&A関連の業務の負荷がかなり高く、クロージングした案件だけでも在籍していた1年間で4件ありました。
外部のコンサルなどを使わないのが会社の方針だったため、株主総会と重なったタイミングは本当に大変でした。
上場会社の株主総会とM&Aを一人法務で対応されたんですか。
それは大変そうですね・・・。
忙しいときは毎日終電という感じでしょうか?
いやいや。そんなもんじゃないです。
一番忙しかった株主総会準備の時期は同時にM&Aが3件進行していたのですが、1週間のうち自宅に帰れる日が1日あれば、という感じです。
会社の近くのホテルに2時頃チェックインして、シャワーだけ浴びたらとりあえず寝て、朝になったら出社する、という生活パターンでした。
うわー、想像をはるかに上回る激務さですね。
そうでしょ?
そんな生活をしている中で39歳の誕生日を迎えて、「あぁ、来年で40歳になるんだ。この調子で仕事していたら、気づいたら40歳になっていそうだな」ってしみじみ思ったんですね。
それと同時に、これから体力は衰えていく一方なのにこんな働き方してたら身が持たないって我に返ったんです。
で、前回転職した際に使ったビズリーチのアプリを立ち上げて、スカウトを確認するようになったんです。
〜7社目
そんなタイミングで現職からスカウトが来て、この会社ならホワイトな働き方できそうって思って面接を受けました。
その他にスカウトを頂いていた会社は、上場準備中だったり、活発にM&Aをしている会社だったりで、激務の環境を変えられるイメージを持てなかったので受けませんでした。
ただ、ここまで転職を重ねてしまうと、転職回数がネックになってしまわないでしょうか?
当然そういう傾向はあると思います。
ただ、転職をした理由は私なりには明確でしたし、正直に全てを話したうえで、それを踏まえてNGの判断になるのであればしょうがないというスタンスで面接に臨みました。
転職回数について一つ言えることは、現職での業務は投資関連で、いわゆる純粋な法務業務からは切り離されているので、もし2社目で買収されることになって厳しいDDを受けた経験や、5社目でIPO準備や会計知識の拡充をした経験、6社目で外部リソースに頼らず必死に食らいついてM&Aをやり抜いた経験などが私になければ、今もない、ということです。
転職回数がネックになることもあれば、転職によって得られた経験が自分を後押ししてくれることも、またあるんですよね。
司法試験の受験をしながらパチスロをやっていたのも、ばっちり転職に役に立ちましたもんね(笑)
そうです、そうです。
20年前にGoogleがこんなに巨大な企業になると予想できた人はほとんどいませんし、10年前にこんなにインハウスが増えると予想できた人もほとんどいません。
そう考えると、中長期で先々のことを予想しようとすることにあまり意味はないんじゃないかって思うんです。
そして、先々のことを予想する代わりに、時代の変化に自分を合わせることの方が、ずっと重要なんだろうと考えています。
時代の変化に合わせられる人になるためには、どうすればよいのでしょうか。
まず、当然ながら、機動的に考え方を変えられる柔軟さが必要なのは間違いないです。過去に固執していては、時代の変化に合わせて自分を変えることなどできませんから。
ただそれだけでは十分ではない。
もう一つ重要なのが、知識のシャワーを浴びることです。
自分に興味があるかどうかはさておき、流行っているものは知っておく。今の自分には関係ないなどと思わず、まずかじってみるんです。今だと例えばブロックチェーンとか。
自分が今興味を持っていることや、目の前の業務に関連することだけを深堀りしていると、軸がずれたときに完全に置いていかれてしまいますからね。
これから転職する方へのメッセージ
最後に、これから転職をしようと考えている法務の方に、一言お願いします。
最近、ドラクエ3の転職システムって、すごく良くできているなって気づいたんです。
転職するとレベルは1に戻されてしまうが、転職前に積み上げたステータスの半分は引き継がれるし、スキルはそのまま引き継がれる。
ドラクエではレベル20になるまで転職できないのですが、同じように、転職するのであれば、まずレベル20まで到達することを目指すべきです。なにしろ、レベル20まではサクサクレベルが上がりますからね(笑)
レベル20と言えるくらいに芯を作った後であれば、職種を変えることで前職とのシナジーが生まれてそれがみなさんの強みになると思います。
本日は長い時間、ありがとうございました!