【転職ストーリー】仲條さんのケース

転職ストーリー

どんな人?

  • 40代男性
  • 転職回数3回(エージェント)
  • Twitter ID:@daisukenakajoh

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本日はよろしくおねがいします。

早速ですが、まず仲條さんが「法務」を職業として選択されるまでの流れをお聞かせいただけますでしょうか。

よくあるパターンだとは思うのですが、大学在学中に司法試験の勉強を開始して、そのまま卒業後に新卒で就職はせず、司法試験の受験を続けていたんです。

当然ながら専業受験生だと収入がないので、卒業後しばらくは親から支援をしてもらっていたのですが、さすがにずっと親のスネをかじり続けるわけにもいかないので、受験を続けながら仕事に就こうかな、と思ったんです。

司法試験の受験をしながら働くことになるので、働くなら受験に対する理解を得られて、かつ弁護士の仕事を身近に感じられる職場として、法律事務所がいいのではと思い、東京弁護士会の求人ページから法律事務所の求人に応募しました。
今ではもう、どうやってその求人ページにたどり着いたのかは思い出せないのですが、法律事務所で勤務したいと思ったときに求人を探す媒体としては良かったと思います。

なるほど。最初は企業ではなく、法律事務所だったんですね。

(東京弁護士会の求人ページを確認しながら)法律事務所の求人としては、いわゆる弁護士秘書寄りの職務と、パラリーガル寄りの職務があるようですが、どちらに近かったのでしょうか。

パラリーガル寄りでした。

もともと、給与を得るためだけに働くというより、弁護士の仕事に間近で触れたいという思いもあっての就職だったので、応募する事務所を選ぶ際にも仕事内容の幅については意識していました。
実際、弁護士1名、事務員1名の事務所だったのですが、かなり幅広い業務を任せていただくことができ、とても勉強になりました。

また、その事務所の先生は、受験のサポート的な意味合いも込めて受験生を雇い入れていらっしゃったので、司法試験の受験に対する理解もあり、その意味でも一般的な企業よりも受験生向きではあったと思います。
ただ、残念ながら、歴代の事務員兼受験生は誰も受かっていなかったようですが(笑)

やはり、平日9時〜18時の勤務だったのですが、フルタイムで仕事があり、また残業も毎日1〜2時間程度は恒常的に発生していたので、それなりに忙しく働いた後に気持ちを入れ替えて勉強するというのは相当強い意志を持っていないと、なかなかできることじゃないんだな、ということを実感しました。

法律事務所での業務は、司法試験の勉強や企業内法務のお仕事に役立ちましたか?

うーん。どうなんでしょう・・・。

司法試験との関係で言えば、訴訟法を勉強する上で、実務における具体的なケースを想像できるようになったという意味では役に立っていないわけではないと思います。ただ、それによって直接問題を解くための知識がつく、というようなダイレクトな効果はなかったと思います。

今の法務の仕事との関係では、正直、法律事務所での業務経験はあまり役には立っていないですね(笑)
訴訟関連の業務が多い企業であれば違ったかもしれませんが、幸いにして、これまで所属していた企業における訴訟関連業務の割合はそれほど高くなかったので。

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法律事務所の次は、いよいよ企業に転職ですね。

そもそもなぜ転職しようと思われたんですか?

実はこの時、当時付き合っていた彼女と結婚しようと思っていたんです。

ただ、当時お世話になっていた法律事務所の給与は、手取りで月額15万円程度。3年強の勤務を通じての昇給も数千円といったところで、さすがにこれでは結婚相手として生活力が足りないだろうと思ったのが一番の理由です。

転職先はどのように探されたのでしょうか?

dodaに登録して、コンタクトしてくれたエージェントから転職先を紹介していただきました。

就職にあたっては必ずしも法務にさほどこだわっておらず、もともとITが好きだったのでSE的な職種もアリかな、とも思っていたのですが、そのエージェントさんは、私のこれまでの経歴を活かすために「法務でやるべき」と言い切ってくれたんです。今思うと、彼の後押しがなければ、いま法務の仕事についていなかったかもしれないですね。

エージェントさんにはたくさん案件を紹介して頂いたのですが、なかなか書類選考が通らなくて。結局20社くらい紹介されたのですが、書類選考が通ったのは、確か3〜4社でした。

企業への就職が初めてだったこともあり、事前にしっかり準備して各社の面接に臨んだのですが、面接も手応えはなく、結果も出ませんでした。どうしても準備した内容や、自分が伝えたいと思っていたことを話しがちになってしまい、やり取りが少しずれてしまったのだと思います。

なかなかうまく行かないことを彼女に相談すると「キャラは悪くないんだから、ありのままを出してくればいいんだよ」とアドバイスされ、そういうものなのかなと思って準備するのをやめた途端、内定をいただけました(笑)

面接において、時々質問と答えが噛み合わないことがあるのですが、もしかすると仲條さんがおっしゃるように、事前の準備に引きずられてしまっているのかもしれませんね…
準備すること自体は良いことである一方、面接においてこの「ズレ」は致命傷になることが少なくないので、意識したいポイントですね。

次の職場はどんな会社だったのでしょうか。

自動車の販売を営む上場企業でした。

従業員は全社で数千名、法務だけでも10名以上在籍している大企業で、それまでの弁護士1名事務員1名の法律事務所とは別世界でしたね。
部長が1名、コーポレートと契約のグループにそれぞれグループリーダーが1名、あとはスタッフという構成で、私は契約のグループに配属されました。

収入面がネックで転職したこともあり、年収は大幅に改善し、400万円程度になりました。ようやくまともな生活を送れる報酬をもらえるようになったので、転職後に晴れて結婚することもできました。

前職の手取りから逆算すると、100万円以上の収入増加ですね。プラン通りご結婚も果たされて、順風満帆ですね。

未経験からの転職は簡単ではなかったと思いますが、同社で評価されたのはどのようなポイントだったと思われますか?

実は、よくわからないんです(笑)
面接でもそう手応えがあったわけでもないので、これまで何社か不合格が続いていたこともあり、今回もだめだったかなぁと。ですから、正直な感想としては、「なぜ内定を取れたのだろう」という感じでした。拾ってもらった、という感覚に近いかもしれません。

強いて言えば、既存の法務メンバーには、司法書士が1名いましたが、それ以外のメンバーは法律を体系的に勉強してきた方ではなかったので、司法試験の受験を通じて法律知識をインプットしてきたことについてはポジティブに評価はしていただけていたようでした。択一には通っていたというところも良かったのかもしれません。未経験からの中途入社としては、これまで積み重ねてきたことを評価していただけたことはありがたかったですね。

とはいえ、契約法務は未経験でしたので、先輩方の指導を受けながら徐々に実務を身に着けていった2年半でした。幸いにして、周囲のメンバーはとても優しく、実務経験のない私に対しても丁寧に接していただけたので、最初にこの会社で法務のキャリアを踏み出せたことは幸運だったと思います。

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お話をお伺いする限りとても居心地が良さそうに思えるのですが、2年半で次の転職を決意されたのは、なにかきっかけがあったのでしょうか。

会社によって法務の役割の範囲は異なると思うのですが、この会社では、法務がかなり幅広い業務を引き受けており、その業務をさばくために法務部門が大きくなってきていました。
そんな中、組織再編において法務部門の業務を整理するとともに、法務の担当者も各事業部に分散させるという方針が打ち出されたんです。

もちろん、所属が事業部に変わったからといって担当業務の内容がガラッと変わることはないのでしょうが、法務部という肩書を失うことによって、キャリア形成の一貫性に傷がついてしまうことに不安を感じたことが大きかったですね。2年ほど法務に携わり、この仕事のおもしろさがわかってきて、今後も法務としてやっていきたいと気持ちを固めたタイミングと重なったこともあり、外に出ようと決意しました。

転職先が決まった後、部長にこの話をしたら「仲條さんはそのまま法務に残すつもりだったんだけどな」って言われたんですけど、結局しばらくしたら法務部という部門ごと消滅していたので、こういうのはあてにならないなってことを実感しましたね(笑)

他の方からも、法務という肩書を失うことによってキャリア形成に悪影響が出ることを心配する声はお聞きしたことがあります。

次の転職先もエージェント経由で選定を進められたんですか?

はい、エージェントです。前回と同様、doda経由でエージェントさんからのコンタクトを待つとともに、リクルートエージェントにも登録しました。

最初にお世話になったエージェントさんには、未経験の自分を熱心に売り込んでくださった恩もありましたし、信頼もしていたので個別にメールをしたのですが返事が返ってこず。もしかしたらエージェントさんも転職してしまっていたのかもしれません。後日その上司の方から謝罪の電話をいただきました。こういうのもタイミングですよね。

最終的にはリクルートエージェントさんから紹介していただいた求人で決まりました。

そういえば、リクルートエージェントのエージェントさんから、「司法試験を受けているということはあまり言わないほうがいいですよ」というアドバイスを頂きました。要は、合格したら辞めてしまうのではないか、という疑念を抱かれるリスクがあるから、という趣旨のようでした。
ですが、私は隠し事をすることに気が進まなかったので、司法試験の受験を続けることを伝え、それでも良いと言ってくれるところを探すことにしました。

エージェントさんは転職に際して有益なアドバイスをくれる心強い存在ですが、結局は自分の人生、自分の転職なので、信念を曲げる必要はないと思っています。

おっしゃるとおりだと思います。
特に初めてエージェントを起用する際はアドバイスを鵜呑みにしてしまいがちですが、一度立ち止まって自分の頭で考えることは重要なのかもしれません。

次の転職はどういった会社でしたか?

上場している化学メーカーでした。
従業員数は連結で3,000名ほどでしたが、法務部員は先輩と自分の2名という小さいチームでした。
その先輩も1年前に入った方だったので、これから一緒に法務チームを作っていこう、というフェーズですね。
所属は総務人事部でした。転職理由で「法務部所属でなくなってしまう」という理由を伝えていたこともあり、内定を頂いた際は近々法務課を作ると約束していただいていましたし、内定通知書にも所属部署として「法務部(仮)」と記載されたのですが、結局5年位待たされましたね。仮の期間にしてはだいぶ長かったです(笑)

上場企業ではありましたが、株主総会は総務の方で担当しており、また訴訟はもちろん、法務が出ていかなければならないような争いが生じることもなかったため、その人数でも無理なく回せていました。

この会社でも司法試験の受験を通じてしっかり法律の知識をインプットできていたということはポジティブに評価していただけました。択一に毎年受かっているんだから、知識面は大丈夫だろう、という感じですね。それに加えて先輩との年齢差もちょうど良かったこともあって、うまくハマったようでした。もしかすると、面接の際に先輩と趣味が一致して盛り上がったのが良かったのかもしれません。ジムカーナというモータースポーツだったんですけどね。

確かに、面接で話が合うと、無意識に評価を上振れさせてしまう傾向はありますよね。面接官としては逆に自戒しなければならないポイントかも知れませんが(笑)

条件面ではいかがでしたか?

元々、自分のキャリアを重視しての転職だったので「下がらなければOK」というスタンスだったのですが、転職先は年齢である程度給与が決まっている年功序列の色が強い会社で、テーブルに当てはめたら500万円ということで、500万円になりました。賞与込みなので月収にするとすごく上がったというわけではありませんが、逆に業績が良くなって賞与は想定より上振れたので、ありがたかったですね。

この会社には結局8年強所属したのですが、昇給もかなりしていただきました。
といっても毎年線形に昇給したわけではなく、グレードが上がった年に、給与も大きく上がったので、昇給への影響という意味では、在籍年数よりもグレードを上げられたことの方が大きかったですね。

他方で残業はほとんどなかったので、勉強はかなり順調に進められました。
択一は、毎年余裕で受かっていたんですが、今思い返すと択一と論文のバランスがおかしかったのかもしれませんね(笑)

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お話をお伺いする限り、受験をしながら働く職場としては最適なように感じますが、どうして転職することにされたのでしょうか。

年功序列が強いことからもご理解いただけると思いますが、この会社は柔軟な働き方を許容するような制度があまり充実しておらず、共働きだった私達にとっては育児と仕事の両立が常に課題になっていました。

かろうじて育児フレックスという制度はあったのですが、それも子供が小学校に入学するとともに適用できなくなるというものだったんです。実際には保育園より学童のほうが預かってくれる時間は短いので、フレックスがより必要になるのは小学校入学後なんですが、制度を作っているのは育児参加をあまりしてこなかったおじさんだったので、いわゆる小1の壁を理解することはできなかったんだと思います。

妻とも話し合ったのですが、通勤時間や学童からの帰宅時間を考えると、子供が小学校入学前にお互い転職するしかないという結論に至り、勤務時間に自由がきく会社を探し始めました。

今回の転職では勤務時間に自由がきくという絶対条件があり、また小学校入学までに転職先が決まっている必要があったので、かなりたくさんのエージェントにコンタクトしました。ざっくり、10社くらいのエージェントさんには相談したと思います。しかし、それでもなかなか条件に合う求人は出てきませんでした。
そんな中、現職を紹介していただき、面接時点ではフレックスはなかったのですが、「入社後にフレックス勤務制度を導入する」と言ってもらえたこともあり、ここへの転職を決めました。

ライフステージに応じて「良い会社」の定義は変わる、という話は聞いたことがあるのですが、まさにそういうケースですね。

えぇ、そう思います。
小学校入学時点では間に合いませんでしたが、5月には約束通りフレックス勤務が可能になり、早く出社し、早く帰る、という生活が可能になりました。

今回の転職は勤務の自由度を最重要視していたため、ある程度収入が落ちることも覚悟していたのですが、収入面でも妥協せずに済んだのもありがたかったです。

これまで法律事務所、自動車販売、化学メーカー、ITと、転職の都度業種を大きく変えていらっしゃいますが、この業種の変遷に対して何か思いはお持ちなのでしょうか。

そうですね・・・、最後の転職の際は、実は前職と同じような業種の求人も紹介されたんです。守秘義務の関係では特に問題はなかったので、その会社に行くことも選択肢としては採り得たのですが、その時考えたのは、ここまで似ている会社に転職しては成長につながらないのではないか、ということでした。

それまでの転職では意図的に業種を変えたわけではありませんが、このときは明確に、新しいことにチャレンジしたいという思いはありましたね。

ただ、今思えば、ですが、企業法務をやっていくのであれば、最初のステップは法律事務所の事務員ではなく、企業の法務部への就職を目指したほうが良かったかもしれません。もちろん、法律事務所勤務の弁護士さんの考え方や動き方を理解できたり、訴訟手続を身近に感じられるようになったことは無駄にはならないとは思いますが、かなり薄給ですからね(笑)

これから転職する方へのメッセージ

最後に、これから転職をしようと考えている法務の方に、一言お願いします。

私のように、司法試験の受験から企業法務への就職へ転進する方にお伝えしたいのは、司法試験の勉強を通じて得た知識、特に民法と会社法の知識は、ちゃんと業務に活用できるということです。
また、就職の面でも、合格にまで至っていなくても、体系的に法律知識をインプットしてきたことを評価してくれる企業は確実に存在します。

ただ、同時に、企業に勤務したことのない方は、当然ビジネスに対する知識や感覚は皆無なので、この点は謙虚にならなければならない。

卑下もせず、傲ることもなく、両者のバランスをとることが重要なのではないかと思います。

本日はありがとうございました!

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